大会担当理事よりのお知らせ

第42回英米文化学会大会要項

・目次
  大会日時・開催方法
  大会プログラム
  抄録

英米文化学会

第42回大会
  


日時:2024年9月7日

会場及び開催方法:日本大学通信教育部1号館81講堂(〒102-8005 東京都千代田区九段南4-8-28
& Zoom*

※日本大学通信教育部へのアクセスは上記住所をクリック
(公式サイトへリンクしています)

大会当日、発熱、咳、喉の痛みなど体調不良のある方はZOOMからご参加ください。



* ... 日本大学通信教育部1号館を会場として使用し、同時にオンライン(Zoom)によるハイフレックス開催となります。

ハイフレックスによるオンライン開催(Zoom利用)及び配布資料(ハンドアウト)のダウンロードに関してはこちら

今大会で配布される発表資料を目的以外に使用することは禁止します。
また、 それらを不特定多数の他人とインターネットやSNSにて共有することは著作権法 によって禁止されています。









受付開始 <10:00>
開会の辞 <10:20 − 10:30> 英米文化学会会長 君塚 淳一(茨城大学)

研究発表 <10:30 − 14:15>
1.<10:30 − 11:00> 歯科診療所英会話教材とカルテにみる歯科衛生士ESP学習語彙
発表者 吉岡 千由里(日本大学)
司会者 石川 英司(城西大学)

2.<11:00 − 11:30>  高校生英語学習者のリスニングおよびライティング能力への
ディクトグロス使用教材の効果について
発表者 千葉 浩彦(日本大学大学院)
司会者 大東 真理(帝京平成大学)
小休憩 <11:30 − 11:45>

3.<11:45 − 12:15>  ゴシック・パロディの射程
Tales of a Traveller の第1 部についての いち 考察
発表者 須藤 祐二(法政大学)
司会者 加藤 千博(神奈川大学)


昼食休憩 <12:15 − 13:45>

4.<13:45 − 14:15> 『不思議の国のアリス』におけるイモ虫の役割とアリスへの影響
発表者 横溝 祐介(明海大学)
司会者 長谷川 千春(至学館大学)

5.<14:15 − 14:45>  ダニエル・エヴァンズの“The Office of Historical Corrections”
に見る歴史の修正
発表者 三井 美穂(拓殖大学)
司会者 君塚 淳一(茨城大学)


小休憩 <14:45 − 15:00>

6.<15:00 − 15:30>  Tennessee Williams の戯曲におけるホテルと「敵」としての時間
Sweet Bird of Youth を中心に
発表者 古木 圭子(奈良大学)
司会者 石塚 倫子(東京家政大学)


休 憩 <15:30 − 16:00>

基調講演 <16:00 − 17:30>  チューダー朝とステュアート朝の権威と権力 ― シェイクスピア、ハーバート、ダン
講演者 曽村 充利(法政大学名誉教授)
司会者 菅野 智城(鶴岡工業高等専門学校)

閉会の辞 <17:30 − 17:40> 英米文化学会副会長 佐野 潤一郎(環太平洋大学)

懇 親 会 <18:00 − 20:00> 懇親会 To the Herbs 市ヶ谷店 懇親会費2000 円
※To the Herbs 市ヶ谷店のサイトは
こちら。懇親会に関するお問い合わせは大会理事もしくは事務局まで。
8 月24 日(土)までに参加希望をフォーム にて申し込み


懇親会参加希望フォーム
(応募締め切り:8月24日(土))










英米文化学会第42回大会抄録




歯科診療所英会話教材とカルテにみる歯科衛生士ESP学習語彙


吉岡 千由里(日本大学)

 英語教育、特にESP(English for specific purposes)においては各分野で共有される用語の優先的指導と学習語彙表の有用性が指摘されている。歯科診療所を歯科衛生士・歯科医・患者の三者コミュケーションの場と捉え、歯科診療所会話教材とカルテを対象に語彙の特徴を分析し、歯科衛生士生が優先して学習すべきESP語彙を選定した。歯科衛生士の患者会話と歯科医の患者会話を比較した結果、語彙レベル分布は同様の傾向を示したが、頻出語は各々の業務やコミュニケーションの役割を反映することが示唆された。また、カルテの略称で使用される語彙は難レベル語の割合が高い一方、初級レベル語も同程度の割合を占めた。選定された235語は、歯科衛生士が患者会話で必要とする語、歯科医の患者会話を理解するための語、カルテの理解に役立つ語から成り、この3つに共通して出現する36語は業務上の最重要語であり、かつ、学習効率の点においても特に優先して学習すべき語であることを論じる。




高校生英語学習者のリスニングおよびライティング能力への
ディクトグロス使用教材の効果について


千葉 浩彦(日本大学大学院)

 ディクトグロスはあるまとまった内容の短めの文章が2-3回読み上げられ、それを学習者が聞き取り、聞き取った語句やキーワードをもとに読み上げられた原文を復元するという技能統合型の指導方法である。
 一度学習した英文を使用して行う場合と初めて聞く英文を使用して行う場合では技能の伸びに違いが出てくることが予想される。これを調査するために、高校生70名を2グループに分けて、@教科書で1度学習した英文の要約文を使用して行ったグループとA初めて聞く英文を使用して行ったグループに、どのように技能に影響がでてくるか検証する。@のグループは、内容がわかっているのでリスニングでは主としてtop-down処理のリスニング能力が必要となり、文を構築することに焦点を置く取り組みが予想されるため、結果としてライティング能力の伸びが期待される。Aのグループは英文の内容を理解しようとbottom-up処理のリスニング能力必要になるために、詳細に聞き取ることに焦点が置かれ、そのためにリスニング能力の向上が期待される。10回にわたるディクトグロスの効果について、その結果を報告し、ディクトグロスの有効活用について考察する。




ゴシック・パロディの射程
Tales of a Traveller の第1 部についての いち 考察


須藤 祐二(法政大学)

 ワシントン・アーヴィング(Washington Irving)の『旅人の話』(Tales of a Traveller)(1824)の第1部は、ゴシック小説の代表的なスタイルの集合体である。この特徴から、読者の視線がスタイルの多様さに向けられやすい構成になっている。しかしながら、後半4本の心理ゴシック物語においては、登場人物たちの恐怖や錯乱などの心理描写に身体の生理反応が合わせて描かれることが多く、その反応も登場人物たちの国籍に応じて書き分けられている。本発表では、これまで無視されてきたこの面を指摘するとともに、その巧みな工夫によって、これらの心理ゴシック物語が、欧州の生理学と心理をめぐる思想史的な次元を備えていることを考察する。その上で、アメリカ人作家であるアーヴィングがこの次元を最終的にどのように無効化しているのかを確認して、ゴシック小説というジャンルのパロディ性を利用した、アーヴィングの欧州観、特に英国観の変化について論じる。




『不思議の国のアリス』におけるイモ虫の役割とアリスへの影響


横溝 祐介(明海大学)

 ルイス・キャロル(Lewis Carroll, Charles Lutwidge Dodgson, 1832-98)の『不思議の国のアリス』(Alice's Adventures in Wonderland, 1865)では、第五章:「イモ虫からの忠告(Chapter V. Advice from Caterpillar)」において、アリスとイモ虫が出会う。イモ虫から「何者であるか」を問われる冒頭で有名であるが、アリス自身のアイデンティティに関わる内容と考えられる。
 『不思議の国のアリス』が子供であるアリスの成長を描いているとすれば、幼体から蛹を介し蝶に完全変態するイモ虫は、「成長」に関して一見露骨なほどに象徴的なキャラクターである。しかしながら、幼体であるにもかかわらず、そのイモ虫は子供をあしらう大人のような言葉遣いでアリスに接するため、しばらく礼儀正しく接していたアリスも会話の途中で辟易とさせられてしまう。
 本発表は、アリスとイモ虫の問答について、イモ虫のセリフからその性質を明らかにし、さらにアリスの返答・行動・反応を含め、その談話を分析することによって、イモ虫がアリスに与える影響を考察する。




ダニエル・エヴァンズの“The Office of Historical Corrections”
に見る歴史の修正


三井 美穂(拓殖大学)

 アフリカ系アメリカ人作家はこれまで、官製の歴史を創作の中で加筆・修正してきたが、新進作家ダニエル・エヴァンズ(Danielle Evans)は短編 “The Office of Historical Corrections” (2020)の中で、ふたりの歴史家にある事件の真相を掘り起こさせ、記念碑を修正させている。その真相は、「ワン・ドロップ・ルール」の実情を問うことになり、その結果致命的な反応を招くことになる。
 『1619プロジェクト』(The 1619 Project, 2019)は、アフリカ人が奴隷化された1619年にアメリカの建国が始まったとして歴史を修正し、学会やジャーナリズムを巻き込む大論争を引き起こした。この現象をふまえ、本発表では、歴史の修正を分断された現代アメリカの表象として位置づけ、創作を超えて現実社会で行われた修正がどこへ向かうのかを、エヴァンズの作品の結末に注目して論じる。





Tennessee Williams の戯曲におけるホテルと「敵」としての時間
Sweet Bird of Youth を中心に


古木 圭子(奈良大学)

 Tennessee Williams (1911-1983)の戯曲においては、芸術家たちが危機に瀕した際の逃避先として、ホテルが用いられることが多い。ホテルは彼らにとって、創造力を消耗する「敵」=「時間」の流れを一時的に止め、自己の芸術と向き合う場所である。とりわけSweet Bird of Youth (1959) では、第一、三幕のアクションのすべてがホテルの部屋で繰り広げられる。舞台俳優のAlexandraは、時の流れがもたらす美貌と才能の衰えに直面できず、ジゴロの男性Chanceとホテルに避難する。本戯曲の基礎となった一幕劇“The Enemy, Time”(1952)は、Chanceを中心にプロットが展開する。一方、Sweet Bird of Youth においては、Alexandraが自身の才能を奪う「敵」である「時間」からホテルへと逃避しながらも、最終的には舞台にカムバックする過程に主眼が置かれる。以上の点から本発表では、“The Enemy, Time”からSweet Bird of Youth への変遷の軌跡をたどりつつ、ホテルという空間と芸術家の関わりについて論じる。




基調講演
チューダー朝とステュアート朝の権威と権力 ― シェイクスピア、ハーバート、ダン


講演者 曽村 充利(法政大学名誉教授)

 エリザベス女王は、教会の分裂が国の分裂を意味する危機の時代において、社会の安定と秩序を維持するために寛容な中庸政策をとった。権力で命令し服従を強制するより、権威によって人々の自発的な服従と同意を手に入れようとしたのである。国教会も教義を無理強いせず、旧教徒と異端以外のあらゆる者を曖昧に包容したため、結果的に「ごた混ぜの現実そのままの教会」が現出することになった。そして寛容政策が生みだす自由と混乱が、逆説的に反乱を抑制し秩序を支えて長期の平和を可能にしたのである。この国家と教会のあり方は文学にどのように反映したのであろうか。シェイクスピア劇の結末は、教義のミニマリズムや反セクト主義という点で、エラスムス的な寛容な信仰を思い起こさせる。ハーバートは指南書を書いて国教会牧師の心構えを説いた。ダンは聖職者となり体制への服従を擁護している。ウォルトンは、カトリックやピューリタンの人間類型とは異なる、柔和で素朴なアングリカンの人間像を描きだした。権力と権威と秩序に関しての文学者たちの洞察を考えてみたい。






問い合わせ:大会担当理事





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