開会挨拶 (3:00−)
英米文化学会会長 曽村充利 (法政大学) 研究発表 1. 高等学校における英作文及び自己評価力育成のための学習ポートフォリオ活用 (3:10−3:50) 発表 柳谷孝一 (日本大学大学院) 司会 田嶋倫雄 (日本大学) 2. 時代の転換期における犠牲者―コンラッドの批判の眼― (3:50−4:30) 発表 渡辺 浩 (就実大学) 司会 塚田英博 (日本大学) 3. 『スタッフォードシャーの博物誌』の先見性と近世日本に与えた影響の可能性について (4:40−5:20) 発表 佐藤幸治 (翻訳家) 司会 高野美千代 (山梨県立大学) 閉会挨拶 (5:20−)
英米文化学会理事長 君塚淳一 (茨城大学) (5:30−5:50)
臨時総会懇親会 (6:00−8:00) 研究発表抄録 1.高等学校における英作文及び自己評価力育成のための学習ポートフォリオ活用 柳谷孝一(日本大学大学院) 英語学習上の自己評価力育成にはポートフォリオの有効性が注目され始めている。本発表では、ポートフォリオの使用が自己評価能力と英作文能力について良い効果を与えるかを検証した結果を報告する。検証方法として、学習者に授業内で扱った題材に関連したテーマの論証文に取り組ませ、自己省察を深めるためにポートフォリオを用いて成果物を語彙・内容・構造・正確さに観点を置いた分析的ルーブリックを基準に自己評価させ、教員評価者も同じルーブリックで評価し、スピアマンの順位相関で2つの評価の関係性を調べた。 分析の結果、学習者の一貫性や説得力のある例・理由などを評価する「内容」の観点のスコアが向上し、作文への自己評価と教員の評価に統計的に有意な正の相関が見られた。このことは、ポートフォリオの使用が自己評価と英作文の能力を高める効果があることを示唆している。本発表では英語学習上のポートフォリオ使用の課題についても考察する。 2. 時代の転換期における犠牲者―コンラッドの批判の眼― 渡辺 浩 (就実大学) この研究においては、コンラッド(Joseph Conrad, 1857-1924)の短編“The Warrior’s Soul”(1917) と長編Under Western Eyes(1911) を比較検討し、時代の転換期に立たされた主人公たちの運命を分析する。上記の2作品は、前者がナポレオン戦争を、後者がロシア革命前の緊迫した社会情勢を背景に描かれている。コンラッド作品に関しては、歴史上有名な人物が物語に登場することは皆無であるといえる。コンラッド自身、ナポレオン戦争自体に大きな関心を抱いていたようであるが、実際に作品でナポレオンを扱うことはなかった。多くの場合、登場するのは無名の市民や組織の一員であり、彼らが運命の流れに巻き込まれるパターンが確認できる。それぞれの作品の主人公トマソフ(Tomassov)とラズーモフ(Razumov)は時代の転換期における犠牲者として描かれている。そして、主義に殉じる生き方としての共通点が見いだせる。上記の点を踏まえて、主人公の犠牲者としての運命を分析し、作家の反ロシア的視点の考察を行う。 3. 『スタッフォードシャーの博物誌』の先見性と近世日本に与えた影響の可能性について 佐藤幸治(翻訳家) 『スタッフォードシャーの博物誌』(Natural History of Staffordshire)は、ロバート・プロット(Robert Plot,1640-1696)によって1686年に刊行された「地域博物誌」である。王政復古期の著名な科学者であったプロットが編纂した本博物誌には、サークル現象、虹彩効果、食物連鎖など現代的視点から見て極めて興味深いトピックが散見される。しかしながら、その多くが未だ見落とされ、研究の俎上に乗っていない。 発表では、本書の歴史的位置づけを踏まえ、同系統の他書に見られないユニークな特徴(話題の特異性や話題提供者の紹介法など)を明らかにする。そこで著者プロットの先見性を、テキスト中の話題を使って具体的に紹介する。その上で、近世日本の科学的随筆の萌芽である地域博物誌として『信濃奇勝録』『北越雪譜』を挙げ、トピックの類似性などから、従来の中国からではなく西洋博物誌からの影響の可能性を検討し、本書の再評価を行う。 |