開会挨拶 (3:00−)
英米文化学会会長 曽村充利 (法政大学) 研究発表 1. 早期英語教育に関する日本人児童母親の意識調査 (3:10−3:50) 発表 堀泉 (日本大学大学院) 司会 大東眞理 (帝京平成大学) 2.「ジョージ・シルバーマンの釈明」の信憑性 (3:50−4:30) 発表 水野隆之 (早稲田大学) 司会 永田喜文 (明星大学) 3.歴史の「もし」をゴシックで考える ― ヘンリー・ジェイムズの “The Jolly Corner” から (4:40−5:20) 発表 川口淑子 (帝京大学) 司会 河内裕二 (明星大学) 閉会挨拶 (5:20−)
英米文化学会理事長 君塚淳一 (茨城大学) 臨時総会 (5:30−5:50)
懇親会 (6:00−8:00) 研究発表抄録 1.早期英語教育に関する日本人児童母親の意識調査 堀 泉(日本大学大学院) 子供の言語獲得に強い影響を持つ母親へ、子供の英語学習に対する期待や不安、理想と現実とのギャップ、英語学習と日本語の関わりについて質問紙法による意識調査を行った。外国語を習得するには、早期から学習を始めることが必要であるという明確な学術的根拠は乏しい。それにも関わらずグローバル化する日本で、早期英語教育に対する期待が高まっている。そのため子供の英語力を伸ばすためには、早期に学習を始めなければ手遅れだと思っている親の意見を聞くことも多い。意識調査の結果から、子供の英語力に対する母親の強い期待と実際の行動との乖離、日本語の獲得や外国語学習に対する知識の曖昧さ、早期英語教育に対する不安の声などが示された。これをふまえ、子供の英語学習のあり方、適切な情報提供を含めた親へのサポート方法について考察する。 2. 「ジョージ・シルバーマンの釈明」の信憑性 水野 隆之(早稲田大学) チャールズ・ディケンズ(Charles Dickens, 1812-70)の「ジョージ・シルバーマンの釈明」(“George Silverman's Explanation,” 1868)は、60歳を過ぎた語り手のシルバーマンが人生を振り返り、タイトルが表す通り「釈明」をする物語である。釈明の動機は30年前にアデリーナの母であるフェアウェイ夫人から受けた誤解を解くことであったが、実際、彼の人生は他人から誤解され、非難されることの連続であった。そしてそこにはシルバーマンが被害者で他人が加害者という枠組が見て取れる。だが、彼の釈明の仕方を分析すると、シルバーマンは被害者を装っているだけではないのか、彼は読者に真実を伝えているのか、読者に隠していることは何もないのかといった疑問が生じ、釈明の信憑性も疑わしくなるのである。では被害者を装って釈明をするシルバーマンの真の動機とは何か。本発表ではこの真の動機をシルバーマンとアデリーナの関係の中に見出せることを論じる。 3. 歴史の「もし」をゴシックで考える ― ヘンリー・ジェイムズの“The Jolly Corner”から 川口 淑子(帝京大学) ヘンリー・ジェイムズは、晩年多くのゴシック小説風の短編小説を書いている。その中でも、作者本人が約二十年ぶりにアメリカを訪れた際の印象が盛り込まれた 「楽しい街角」(“The Jolly Corner”,1908)では、もし自分が外国に移住することなくアメリカに住み続けていたらどうなっていたかという作者と作品の主人公の両方が関わる問題が扱われ、ジェイムズらしさが表れる作品である。本発表では、アメリカのゴシック、現代のゴシック文学などの傾向を視野に入れながら、非日常世界で感じる恐怖とは対照的な、わずかな違和感や違いが生み出すジェイムズらしい不安や恐怖、自己評価の表現を分析する。特に作者の個人的な関心とゴシックというジャンルを結び付ける手法に注目し、古典的な作品からの変化、発展を読み取る。 |