英米文化学会
平成13年度活動



平成13年度学会暦
    第106回例会 第19回大会 第107回例会 第108回例会
例会・大会 6月9日 9月8日 11月17日 平成14年3月9日
発表申込締切 4月9日 4月20日 9月17日 平成14年1月9日
会報投稿締切 47号=5月9日 48号=7月8日 49号=10月9日 50号=平成14年2月1日
会誌『英米文化』投稿締切 平成13年10月31日  
文字の大きさを変更した場合に、表の中の文字が見えにくくなる場合があります。-->リロード・ボタンを押す


年度末の例会にてフォーラム2002を企画しています。
 平成14年3月9日(土)は、学会暦では例会となっていますが、フォーラム2002を計画しております。タイトルは、「英語力を問う」です。興味津々で参加者があふれるような企画を考えています。最新情報を今後ホームページならびに会報にてお知らせしております。

英米文化学会第107回例会

開催年月日: 平成13年11月17日(土)
場 所:日本大学理工学部9号館12階9124教室<--クリックして地図表示
忘年懇親会: レストラン「ワインベルク2」 <--クリックして地図表示 03-5259-0022(午後6時から)   
参加費用:4000円

※忘年会もかねております。懇親会のみへの参加も歓迎いたします。ふるってご参加ください。

<研究発表>
1.英字新聞リーディングの基礎ー英文メディアに慣れ親しむ方法(15:05−15:45)
                               斎藤さなえ(立教大学)
                                    司会 糸井 江美(文教大学)
2.ブロードウェーにおけるビジネスと芸術の両立(15:55−16:35)
                              茂木 祟(杏林大学)
                           司会 田中 健二 (摂南大学)
3.「朱門のうれひ」と『ハムレット』に関する考察(16:45−17:25)
                       志村 哲(山梨県立石和高校)
                         司会 佐久田 英子(拓殖大学)
    
 

◆研究発表レジュメ
1. 英字新聞リーディングの基礎―英文メディアに慣れ親しむ方法 
                              斎藤さなえ(立教大学)
  本発表では、英字新聞リーディングの授業における基礎的な、しかし重要なアクティビティの実際とその活用結果を報告し、今後のメディア英語教材の扱い方を検討したい。学生の基礎学力レベルを考慮に入れ、とかく敬遠しがちな英字新聞へのマイナスイメージを緩和するために、(1)短期的目標としては、半期で新聞英語の基礎的な特徴を考察し、自らの関心にねざした記事選びを通して、リーディングの習慣づけを試みる、(2)長期的目標としては、社会への掛け橋としての英字新聞の役割を会得する、というのが二つの大きな目標である。あわせて、英字新聞を教材として扱う際のリーディングの基礎的な手法を、授業の実践を紹介しながら提言する。

2. ブロードウェーにおけるビジネスと芸術の両立
        茂木 祟(杏林大学)
ブロードウェーの劇場街は、良くも悪くもニューヨークという近代文明都市に生まれ、民主主義と資本主義の変遷のなかで、時に華やかに時にシニカルに活動してきた。したがって、ブロードウェーをどう評価するかという問いは、ニューヨークという都市文明を如何に位置づけるかという問題から導かれる。本発表では、ブロードウェーの舞台製作の流れを、法的・経済的側面から分析し、それがシステムとしてどのように成立しているのかを検証する。具体的には、プロデューサー、ロングラン方式、組合、マーケティング、NPOの活用などについて言及する予定である。とくに本発表では、リスクの多いベンチャー・ビジネスといってよい演劇において、資金を確保する有力な方式である「リミティッド・パートナーシップ」について詳説する。

3. 「朱門のうれひ」と『ハムレット』に関する考察
    志村 哲(山梨県立石和高校)
島崎藤村の『朱門のうれひ』は、七齣十二景から構成される一劇詩である。この作品は構想の上で『ハムレット』との関係が非常に強く、その影響を色濃く受けている。特に、人間の破滅や国家の崩壊をテーマに取り上げ、悲劇的な宿命や社会の運命に巻き込まれた登場人物の、外的諸事情と内面の情念や性に関する葛藤、すなわち<うれひ>を追求したものといえよう。当時、日本の若者の目は欧米文化に向けられた。とくに文芸活動としては、西洋の戯曲を日本の風土に翻案する実験が多く試みられたが、藤村もそうした作家のひとりであった。彼はシェ−クスピアに憧憬の念を抱き、その戯曲から多くの思想や技法を学んだ。本発表では、『朱門のうれひ』と『ハムレット』をその類似の諸相において検討する。



英米文化学会第106回例会

開催年月日: 平成13年6月9日(土)
場 所:日本大学歯学部3号館2階第5講堂(お茶の水駅下車ニコライ堂至近) 
総会:発表終了後に同じ場所にて総会を開催いたします。
懇親会:参加者の負担を軽減すべく、会費2,000円!で5時半より6階の実習室にて行います。
     会場は、同じ校舎の6階となります。懇親会のみへの参加も歓迎いたします。


研究発表
1. 『ロ−ド・ジム』とデラシネの実感
淺井 やよい(青山学院大学)
司会 相良英明(鶴見大学)
2. エズラ・パウンドのヴェニス――ジョン・ラスキンを媒介にして
塚田英博(城西大学
司会 鈴木哲也(明治大学)
                     

◆研究発表レジュメ
1. 『ロ−ド・ジム』とデラシネの実感            淺井 やよい
  『ロ−ド・ジム』には霧がかかっている。それはマ−ロウ船長の曖昧な語り口に著しい。五里霧中 のわれわれに見えないものが、聞こえないものが、触れられないものが存在するのだとマ−ロウは言う。 とすれば『ロ−ド・ジム』に「実感 (a sense of reality)」はあるのか? この「実感」とは現実そのものではなく、 人によって違うが現実だと感じられる"a sense" である。本発表ではこの「実感」を取り上げたい。『ロ−ド・ジム』 の実感には作者コンラッドの実人生が絡んでいる。ポ−ランド人コンラッドはフランス経由でイギリスに帰化した。 船乗りから転身し作家になった彼はヴィクトリア朝社会で内面の異邦人だった。だが創造は矛盾から生まれる。 有形の船は無形の海に弄ばれ、矛盾の波間でバランスを失して揺らぐ危うい存在である。それがジムでありコン ラッドだ。ジム同様コンラッドもまた故郷を離れ根無し草(デラシネ)になった。東欧から西欧へと別世界に置かれ たコンラッドの価値観は覆ったのだ。西洋から東洋へ逃げ、かつ夢を追う『ロ−ド・ジム』の「実感」に焦点を当て つつコンラッドの虚実に迫る。

2. エズラ・パウンドのヴェニス――ジョン・ラスキンを媒介にして 塚田英博
パウンドはイギリスに嫌悪を感じ、1921年にフランスへ渡り後にイタリアへと向かう。そしてその地で生涯を閉じた。 パウンドがイギリスを出国した原因の一つに、その大衆嫌いがあったことは間違いない。しかし何故脱出先が故国 アメリカではなく、イタリアだったのか。それも特にヴェニスをパウンドは甚だしく気に入り、『キャントウズ』の中で何 度も取り上げている。パウンドがそこまでヴェニスに固執した理由は何であったのか。この問いの答えを導く重要な 存在が、ジョン・ラスキンである。ラスキンは人工的なルネッサンスを嫌い、中世の雰囲気が残るヴェニスの芸術を 愛した。そしてパウンドは人工的ではない古代の神々が存在する芸術の復元を目指した。
今回の発表では、「ラスキンのヴェニス」というフィルターを通して、そこに自らの芸術観念の理想像を見出したパ ウンドを、その作品等によりながら位置付けたい。

英米文化学会第19回大会
 開催日:平成13年9月8日(土)
 場所:日本大学会館701号会議室〔JR市ヶ谷駅アルカディア市ヶ谷(旧私学会館)向い〕
  〒102-8275 東京都千代田区九段南4−8   03(5275)8110
なお、会場への電話での直接の問い合せはご遠慮ください。

当日会費:一般500円  学生300円
大会事務局:日本大学歯学部 佐藤英語研究室
〒101−8310 千代田区神田駿河台1−18−13
電話 03−3219−8160
E-mail:HaruoSato(at)SES-online.jp
学会ホームページ:http://www.ses-online.jp/indexj.html


大会時程
受付開始 9:00
挨拶〈9:30〜9:40〉 英米文化学会会長 高取 清(文京女子大学)
研究発表 9:40〜16:20
9:40〜10:20
1. T.S.エリオットの信仰と教会
      
亀岡 浩一(立正大学)
司会者 小舘 美彦(中央大学)
10:20〜11:00

2. ヘンリー・ジェイムズの国際テーマの可能性
     川口 淑子(東京工科大学)
司会者 吉田俊実(東京工科大学)

11:10〜11:50
3. 『ハワイ通信』と『地中海遊覧記』の脇役の意味
     佐野 潤一郎(創価大学)
司会者 吉田 真理子(津田塾大学)

11:50〜12:30 4. The Cement Gardenに見られるシンボリズム
          明石 美恵子(鴨方町立鴨方中学校)
司会者 石川 郁二(法政大学)

13:30〜14:10
 5.  動詞の語形成を習得するプロセス――大学での英語教育の実践から
                      松谷 明美(横浜市立大学)
司会者 平川 敦子(城西大学)

14:10〜14:50
6. 第二言語読解における下位レベル処理能力の影響
――どのような下位レベル処理能力が第二言語読解力を予測するか
  松村 優子(京都橘女子大学)
司会者 藤田 牧子(神奈川県立中沢高校)

15:00〜15:40
7. カントリーソングの歌詞から見る情感
    
田中 健二(摂南大学)
司会者 君塚 淳一(茨城大学)

15:40〜16:20
8. ガートルード・コッパアドとは誰か
――ラディカル・フェミニストの『息子と恋人』批判を中心に
            須田 理恵(日本大学)
司会者 吉原 令子(法政大学)



講 演                                      16:30〜17:30 私の英語教育論
48年間の教師生活をふり返って
名 和 雄 次 郎(拓殖大学名誉教授)


懇親会
時 間:18:00〜20:00
場 所:日本大学会館地下一階RESTAURANT
会 費: 4,000円


第19回大会研究発表レジュメ
1. T.S.エリオットの信仰と教会
  亀岡 浩一(立正大学)
  エリオットが本格的に詩の創作活動を始めたのは1915年頃である。当時のエリオットが詩作する上で心掛けていたことは、後年"What Dante Means to Me" で述べたように、倦怠や憂鬱といった類のものを詩の素材にすることであった。従って、頽廃的な現代人の日常生活の様子や都市の荒廃した場面が、前期の詩には多く描かれている。ところが、1927年にイギリスに帰化した頃から、この創作態度に変化が現われる。特に、一つのまとまった作品として『灰の水曜日』が発表された1930年以降になると、詩の作品世界は、主として宗教的な要素で構成されるようになる。このような創作上の変遷は、エリオットの実人生とも何らかの関連があるように思われる。そこで、エリオットにとっての信仰とはどのようなものであり、エリオットが教会といかなる関係を築こうとしたのかを考える。

2. ヘンリー・ジェイムズの国際テーマの可能性
川口淑子(東京工科大学)
  ヘンリー・ジェイムズの代表作の一つである『鳩の翼』は、二人の主人公が存在し、二通りの物語が並列しているように見える、と議論されてきた。これを作者の不手際と見なす見方もあるものの、二人の主人公の関係が、作品に奥行きを与えているのは確かである。
 D・クルックは、いわゆる国際テーマがジェイムズの主要な「客観的相関物」だと評したが、確かに、『鳩の翼』の国際テーマは、国民性や文化的特色を表現するのみではない。主人公それぞれが関わるイギリスとアメリカは、一方が他方より優位にあるという単純な図式には収まりきらない微妙な関係にあり、ここでの人物関係や異文化の接触は、その一つのモデルである。今回の発表では、特に主人公二人の関係、あるいはイギリスとアメリカの関係に注目し、ポスト・コロニアリズムの視点も含め、『鳩の翼』の解釈を広げたい。 

   3.『ハワイ通信』と『地中海遊覧記』の脇役の意味
佐野潤一郎(創価大学)
  『地中海遊覧記』は、マ−ク・トウェイン初の旅行記として出版された作品であるが、それ以前にトウェインはハワイ諸島へ特派員として派遣され、そこから本土の新聞に紀行文を書き送っている。それが後年『ハワイ通信』として纏められたものである。いずれも旅行記であるから、作者自身が語り手として登場し、第一人称で語るのは当然としても、トウェインの述懐を引き立たせる脇役として、特定の人物名が登場する点が注目される。『ハワイ通信』や『地中海遊覧記』の草稿における「ブラウン」、そして校正を経てブラウンを削除した後の『地中海遊覧記』における五人の案内人に共通してつけられた呼び名「ファーガソン」である。彼らの存在がトウェインの深い思想性と、作品としての娯楽性という二つの対立する要素を媒介していたことを検証する。

4. The Cement Gardenに見られるシンボリズム
明石美恵子(鴨方町立鴨方中学校)
イアン・マキュアンの処女小説The Cement Gardenは、思春期の子供たちが持つ混沌とした心理状況と苦悩を取り扱っている。その後の作品に見られる特徴をすでに持ちながら、後期の作品ほどあからさまではないが、シンボリズムの特質をも兼ね備えている。マキュアンはこの作品で、いくつかの事物に象徴性を持たせている。それはたとえば夢であり、匂いである。この夢と匂いは、子供たちの心理、あるいは子供たちを取り囲む環境を象徴しているのではないか。さらに、登場人物たちの不安、恐怖、その他奥底に眠る心情を強調するものでもある。このシンボリズムが、子供たちの持つ残虐性や心の逃避と密接に結びつき、それらを露わにしてこの作品の主題となり得ている。このシンボリズムに焦点を当て、またEnduring Loveで見られる気球の持つ象徴性との共通点をも探りながら、この作品を読む。

5. 動詞の語形成を習得するプロセス――大学での英語教育の実践から――
松谷 明美(横浜市立大学)
 本発表は、「英語を第二言語として学ぶ大学生たちが、なぜ動詞の屈折に関する初歩的な文法上の誤りを犯すのか」という疑問に対して、生成文法の視点から解答を与えると同時に、このような文法上の誤りを減らし、母国語である日本語に加え、第二言語である英語の文法を学生に習得させるために必要な肯定証拠を、LL装置を使用して学生に提供した結果の報告である。動詞の屈折に関する誤りの矯正を試みた授業の実践内容と、その結果として現れた屈折に関する文法上の誤りの減少過程について述べたい。

6. 第二言語読解における下位レベル処理能力の影響
――どのような下位レベル処理能力が第二言語読解力を予測するか――
 松村優子(京都橘女子大学)
読解とは語認識等の下位レベル処理とスキーマ活用等の上位レベル処理の相互作用によって成立する、と言われているが、第二言語の読解において、下位レベル処理能力の研究はこれまであまり行われていない。しかし、linguistic Threshold Hypothesis、あるいはShort-circuit Hypothesisによると、第二言語においてある一定レベルの言語能力がないと、第一言語で使える有効な読解ストラテジーも、第二言語の読解には活用できないとされる。そこで、本研究では、日本人大学生の英語読解テスト結果にどのような下位レベル処理要素が関係するかを検証する。研究対象の要素とは、正書法判断能力、音韻判断能力、文法判断能力、認識語彙力等である。これらと読解テスト得点との相関関係を調べる。さらにこれらの要素を説明変数に、読解テスト得点を従属変数にして重回帰分析を試み、どの要素が読解能力をよく予測するかを実証する。

7. カントリーソングの歌詞から見る情感
田中健二(摂南大学)
全米には2,500のカントリー専門ラジオ局があり、毎週7千万人のアメリカ人がラジオでカントリーソングを聞く。またCDは年間約2,500億円の売り上げを記録している。本研究では、それらカントリーソングの歌詞が訴えたい情感は何か、を歌詞の収集・分析を通じて探りたい。本研究のためコンピューターに300曲の歌詞を入力し検索作業をおこない、数値を示しながら形容詞や動詞の使用実態も明らかにする。情感は歌詞だけでなくカントリーソングの旋律そのものにも大きく作用されるが、本研究では専ら歌詞を扱うこととする。

8. ガートルード・コッパアドとは誰か
――ラディカル・フェミニストの『息子と恋人』批判を中心に――
須田理恵(日本大学)
『息子と恋人』は最初『ポール・モレル』と名付けられ、著者のD.H.ロレンスはこれを自伝と称したことは周知である。だが『ポール・モレル』が実母をモデルとした『マチルド』という未完の小説から発生したことはあまり知られていない。このような小説の変遷の裏には大きな時代のうねりに翻弄された作者ロレンスの複雑な心境を垣間見ることができるのである。ガートルード・コッパアドという記述はたった一度しかされていないことをケイト・ミレットは指摘したが、それは小説の発端の名残とも言える。モレル夫人のギルドへの参加の描写の例にあるように、『息子と恋人』執筆時には意図しなかった「母」や「モレル夫人」としてではない一人の孤独な炭鉱労働者の妻としてのガートルード・コッパアドの素顔を作品の中で考察し、論ずる。



Top Page


E-mail: HaruoSato(at)SES-online.jp