発表者 長坂 昇(昭和女子大学短期大学部)
司 会 鈴木 哲也(明治大学)
エマソンが唱える超絶主義と近代ヨーロッパ哲学が生んだ実存主義とはいくつかの点で共通点が見られる。まず両者はロゴスというよりもパトスである。エマソンはデカルトの合理主義よりもキェルケゴールの個の生命に向かう。次にLeben<生>を追求して止まない。Addressの中でlifelessな説教を批判して吹雪の躍動に真理を認める所とニーチェの「生の歓喜、恍惚」の世界とかハイデガーの「存在とは時間である、従って生成こそ存在である」と主張する点とはまさに同一思想であるといえる。更に両者は既成の価値観を根底から覆そうとする意気込みがある。エマソンが史的キリスト教の奇蹟をMonsterと論破する根拠はニーチェが「神が死んだ」と叫びルサンチマン理論に基づく伝統的なキリスト教思想を根本から否定して、ディオニソス思想を打ち立て生命の宗教とも言える哲学思想を大成した点と大変よく類似するのである。
発表者 木村みどり(城西大学)
司 会 宮本 和恵(東京国際大学)
近年、Communication Strategiesの研究が盛んに行われている。しかし、Tarone(1978)が指摘しているように、頻繁に、また代償的にこのストラテジーに頼りすぎてしまうと、言語能力不足を技術的に埋め合わせ、第2言語学習を回避するという危険性(水野、1995)がある。英語を外国語として学ぶ日本人の学生の能力を伸ばす上で大事なのは、むしろ、Learning Strategies、つまり、英語を習得するために、学習者がどのような勉強方法をとっているか、どのような工夫や努力をおこなっているか、を調査し、これからの効果的な英語指導方法を探ることではなかろうか。本研究では、100名の被験者に2種類のSpeaking taskを与え、Crookes(1989)、Cohen and Olshtain(1993)、Foster and Skehan(1996)が主張するPlanningの段階に特に焦点を当て、学習者がどのようなストラテジーを用い、またそれが、実際のパフォーマンスの中でどのように生かされているかを調査する。
発表者 大東 俊一(法政大学)
司 会 先川 暢郎(拓殖短期大学)
ラフカディオ・ハーンは欧米の読者に日本を紹介する作品を多数書いている。その中には仏教をテーマとした作品も数篇ある。今日、日本の読者がそれらを翻訳で読む場合、訳者によって用いられた仏教用語の豊富さや、その使用の適切さゆえに、ハーンの仏教理解が相当なものであるとの印象を受けるのが通例である。
しかし、仔細に検討してみると、ハーンの仏教理解には大きな偏りが見られる。ハーンは「涅槃」を仏教の主要な教義と見なしているが、それ自体は正しいとしても、そのような理解を『日本-一つの試論』などの日本研究の一環として表明するのは妥当性を欠くように思われる。インドや中国の仏教とはかなり趣を異にする日本的な仏教を築き上げてきた人々のことをハーンは扱っていないからである。本発表ではハーンの日本研究における仏教理解に焦点をしぼり、その偏向の様子と原因を検討する。
11:20-12:00
3.コンピュータはESP教材作成にどのような貢献ができうるのか
発表者 鳥飼慎一郎(立教大学)
司 会 小林 弘(東京理科大学)
発表者は、1997年度から3年間にわたり科学研究費補助金を受け、「コンピュータ分析によるESP教材、教授法の開発」という研究課題で研究を行っている。現在までに、アメリカの代表的な185の憲法判例、68万語余りをコンピュータに入力し、ESP教材作成のための基礎分析を完了している。
1) このようなコンピュータを使った言語分析の基礎理論であるコーパス言語学の紹介。
2) コンピュータへのデータ入力方法、入力データの分析ソフト、コンコーダンスの作成方法等についての紹介。
3) インデックス、コンコーダンスの活用方法等に関する紹介。
その上で、コンピュータによる分析結果は、英語教育、とりわけ教材作成あるいは教授法開発にどのような貢献が可能なのか論じてゆきたい。
4.マーガレット・フラー:もう一つのペルソナ
---イタリア・リソルジメントへの軌跡-
発表者 上野 和子(昭和女子大学)
司 会 吉原 令子(昭和女子大学)
NYトリビューン紙の特派員としてヨーロッパに滞在したマーガレット・フラーは、1848年のイタリア革命時には、ローマ共和国創立およびフランス軍の侵入による崩壊を、包囲されたローマから伝え、イタリア人の独立と統一への協力を熱狂的に訴えた。イギリスやフランスでははるかに進んだ産業革命の影響と、46年からの凶作、旧体制の矛盾を見聞し、フーリエ主義や当時の社会主義運動の認識を深めていった。多くの社会施設を見学し、カーライル、ジュゼッペ・マッツーニ、ジョルジュ・サンド、ミッキー・ヴィッツ等と交流したフラーは、すでに社会主義者を自認し革命家の同志であった。ここでは、フラーのトリビューン紙のイタリア革命の支援を、ロンドン・タイムズの保守的な取り扱いと比較し、その精神的道程を革命の旗手としての公のペルソナと、フラーの私的葛藤の中に検討する。
講 演 8月29日<13:00―14:30>
漫画『スーパーマン』の誕生
専修大学教授 大島 良行
15:00 閉会
開催協力校
Tokyo University of Agriculture
東京農業大学 (http://www.nodai.ac.jp/index.html)
世田谷キャンパス 大学院・応用生物科学部・地域環境科学部・国際食料情報学部・短期大学部
156-8502 東京都世田谷区桜丘1-1-1
厚木キャンパス 農学部
243-0034 神奈川県厚木市船子1737
オホーツクキャンパス 生物産業学部
099-2493 北海道網走市字八坂196
英米文化学会第98回例会のお知らせ
標記の例会と総会を下記要領にて開催します。
◆開催年月日:平成10年11月21日(土)
◆開催場所: 日本大学歯学部3号館2階
(地図)
◆時 間:例会 15:00-18:00
◆懇親忘年会 18:00 於 お茶の水駅前通り地下 Kirin City 03-3233-3070(地図の緑の部分) にて会費5,000円 学生(含大学院)3,500円---当日ご多用で懇親忘年会のみの参加の会員も歓迎します。
研究発表
1.British Cultural Studiesの現場 ―― 理論と実践の狭間で ――
渡 辺 愛 子(学習院大学)
2. 『チャタレイ夫人の恋人』におけるD.H.ロレンスの技法について
須田理恵(日本大学)
3.ポライトネス再考:ビジネスレターにおける「断りの構造」の日英比較
増澤 史子(昭和女子大学)
◆第98回例会研究発表レジメ
1.British Cultural Studiesの現場 ―― 理論と実践の狭間で ――
渡 辺 愛 子(学習院大学)
近年、世界各地でグローバル化が進むにつれて、文化的国境というものはますますあいまいなものになり、各国の国民性、地域性とは何かという問題がさまざまな学問分野において研究対象とされるようになってきた。いわゆる「地域研究」(Regional Studies)は必ずしも目新しいものではないが、最近日本でも注目され始めているCultural Studiesは、この2,30年の間にその発祥地であるイギリスからアメリカ、そしてアジアにも広がりはじめた比較的新しい研究領域である。 一般に「差異の政治学」と呼ばれるCultural Studiesの研究概念の一つは、過去の学問の細分化傾向を見直し、「学際的な」(interdisciplinary)見地から文化という有機体を多角的に解釈しようというものである。この手法は、これまでにある程度の成果を上げてきたといえるが、その反面、まさに「学問」という区別を否定した「学際」をみずから標榜するという独特な特質ために、種々の学問の高等教育機関である大学との間に、不協和音を生み出しているように思われる。本発表では、最近になって特に顕在化しつつある、British Cultural Studiesの理念と現実のひずみと将来的展望について、早くからこの研究領域に賛同しているイギリスのウォリック大学の例を参考に考える。
2. 『チャタレイ夫人の恋人』におけるD.H.ロレンスの技法について
須田理恵(日本大学)
小説家は時代や置かれた環境によってその技法を変えるものであるが、ロレンスもその例に漏れない。『恋する女たち』を書いて10年を経て、オーストラリアで書いた『カンガルー』では象徴的というより、貼り絵のように事実とフィクションを集めて書いたコラージュの描法を用いたといわれる。ロレンスは或る意味で意識的に技巧を凝らしている小説家である。また、小説家を職業とするというよりも、生きることが真っ先にあった独特な小説家であった。フリーダとの結婚がロレンスの人生の大半を支配したが、当然作品のなかに二人の生活は活写されている。『カンガルー』で亭主関白、それとも友人か、という立場の選択を迫られたロレンスは、「生涯あたためていた」とフリーダの言う『チャタレイ夫人の恋人』ではいかなる姿で登場するのであろうか。牧歌的とも神話的ともいわれる作品において、夫婦の在り方が、いかに変化し描かれているかをその環境と立場などを鑑みながら考察する。
3.ポライトネス再考:ビジネスレターにおける「断りの構造」の日英比較
増澤 史子(昭和女子大学)
「丁寧に断る」という行為はdouble bindである。つまり、「断る」ということ自体は "rude"で、断り方は"polite"にという言語活動を同時におこなうことを余儀なくされている。「断る」という言語活動は「謝る」、「褒める」などと同様にSpeech Actsの分野で現在に至るまで、数多く議論されてきている。Politenessに関しても1970年代からさまざまな角度から研究がなされてきている。代表的なものはLakoff, Brown & Levinson, Leech, そして最近ではFraserがpolitenessの原理や定理をとりあげている。その中で、今回は書き言葉における "refusal"をとりあげてみた。"refusal"の研究の多くは会話を取りあげているものが多い。その理由の一つとして、断るというネガテイブな言語活動を文字に残しておきたくないという心理が働き、できれば口頭で断り、証拠が残らないほうが好ましいといった態度が日米のビジネス社会で見られる傾向のようである。したがって資料が集めにくいのである。また、口頭による研究も、その多くはアンケートに頼るものが多い。実際にテープレコーダーを仕掛けても特定の断りの言語を入手するのは容易ではない。よって今回は「断りの手紙」中でも入手可能であった「不採用通知」に焦点をしぼって"Polite Refusal"とは何かということを英語の通知文と日本語の通知文を比較検討してみた。その結果により、Pragmatic Transferを始め、実際ビジネスの現場で求められている日本人の英語は何か検証する。
英米文化学会第97回例会と総会開催のお知らせ
標記の例会と総会を下記要領にて開催します。
◆開催年月日:平成10年6月20日(土)
◆開催場所: 日本大学歯学部3号館2階(地図)
◆時 間:例会 15:00-17:00
総会 17:00-17:30
◆懇親会 18:00 於 校舎筋向かいのビル2階 Big Pan にて会費5,000円 当日ご多用で懇親会のみの参加の会員も歓迎します。
研究発表
1.日本の雑誌広告のテクスト分析
---家庭生活誌における「夫」と「妻」の語彙選択を中心に---井上愛子 (慶応義塾大学)
司会 吉原 令子(法政大学)
2.創造か進化か---アメリカの小さな町ヴィスタの教育論争、1992-94---鵜浦 裕 (札幌大学)
司会 大東 俊一(法政大学)
◆第97回例会研究発表レジメ
1.日本の雑誌広告のテクスト分析---家庭生活誌における「夫」と「妻」の語彙選択を中心に---
井上愛子
アメリカでの雑誌広告に見られる女性のステレオタイプを分析した研究と照らし合わせ、主として日本の家庭生活誌の広告テクストを対象に女性の表現のされ方を見ていく。特に「夫」と「妻」の語彙選択に焦点をあてて、英字新聞のテクスト分析をしたKitisとMilapides(1997)の研究を参考としてテクスト分析にはTannen(1979)の提唱する分析方法を用いた。分析結果より多様な女性の姿が浮かび上がり、ステレオタイプのみならず反ステレオタイプの女性像が確認された。「言語はときに性差別文化を反映し概念や推測を伝える媒体として常に談話のなかで使用されるうちに馴染んで習慣化されてしまうため本来の意味を見落としてしまう」とCameron(1991)は言っている。とりわけ雑誌広告は使用されることばと視覚的効果が相互に作用して強い影響を与えると考える。「夫」と「妻」の呼称については意識を高め時代と共に変化が起こることを期待する。
2.創造か進化か---アメリカの小さな町ヴィスタの教育論争、1992-94---
鵜浦 裕
アメリカでは1987年の最高裁判決により公立学校の科学の時間に創造論を唱道することはできなくなった。しかし90年代にはいってもこの決定を無視するかのような事件が各地でフレアー・アップしている。報告ではカリフォルニア州の田舎町で起きた一つの事件を紹介する。1992年11月大統領選挙と同時におこなわれた教育委員選挙により、カリフォルニア州ヴィスタ統合学校区の教育委員会がキリスト教創造論者に乗っ取られた。5議席のうち3議席が創造論者によって占められたのである。彼らは同学校区のカリキュラムに生物進化論批判と「創造科学」を持ち込むためにいろいろな方策を試みたが、そのたびにリベラルな市民や教員との対立を深めていった。その過程で創造論教育の問題だけでなく、性教育や移民の子弟教育の問題も対立の原因となった。しかしいずれも話し合いで解決することができず、最終的に教員組合が資金力とマンパワーにものをいわせ、創造論委員をリコールしてしまうという最悪の結果を招いた。この事件を追いかけることで、創造論者という日本ではあまり知られていないアメリカ人像にせまり、同時に「創造vs進化」論争がアメリカの小さな町でどのような形をとるのかを明らかにしたい。
◆第16回大会開催のお知らせ
標記の大会を以下要領にて開催します。
◆開催年月日:平成10年8月28日(金)・29日(土) 受付開始28日 12:30 29日 10:00
◆場 所:東京農業大学生物産業学部(オホーツク・キャンパス)
〒099-2422 北海道網走市字八坂196
◆宿 泊 先:オホーツク渚亭
◆懇 親 会:オホーツク渚亭1階宴会場(28日18:00―20:00)
研究発表および講演
第1日 8月28日(金) 13:00-15:30
1.世代差からとらえた英米借用語受容とコミュニケーション・ブレークダウンとの相関関係
浅間正通(静岡大学)
高取康之(玉川大学)
2.シェイクスピア・レシピ 越智敏之(千葉工業大学)
3.社会言語学的能力」の観点から見た「オーラルB」インプットの考察 藤田牧子 (神奈川県立衛生短期大学付属二俣川高校)
4.超絶と実存-その交点を求めて 長坂 昇 (昭和女子大学短期大学部)
5.高等学校リスニング教科書の言語機能分析 平川敦子(城西大学)
第2日 8月29日(土) 10:30-15:00
1.Speaking taskにおけるLearning Strategies 木村みどり(城西大学)
2.ラフカディオ・ハーンの仏教観 大東俊一(法政大学)
3.コンピュータはESP教材作成にどのような貢献ができうるのか 鳥飼慎一郎(立教大学)
4.マーガレット・フラー:もう一つのペルソナ
-イタリア・リソルジメントへの軌跡- 上野和子(昭和女子大学)
講 演: 大島 良行(専修大学教授)
演 題:漫画『スーパーマン』の誕生
当日会費:会員 1,000円 一般500円 学生300円
第16回大会事務局:佐藤英語研究室 〒101-8310 千代田区神田駿河台1-8-13
日本大学歯学部 電話03-3219-8160 ファックス 03-5204-8787
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E-mail: HaruoSato(at)SES-online.jp